喫煙対策のためのガイドライン
1.趣旨(解説)
喫煙による健康への影響に関する社会的関心が高まる中で、自らの意志とは関係なく、環境中のたばこの煙を吸入すること(以下「受動喫煙」という。)による非喫煙者の健康に対する影響が報告されている。また受動喫煙は、非喫煙者に対して不快感、ストレス等も与えていることが指摘されており、職場における労働者の健康の確保や快適な職場環境の形成の促進の観点から、受動喫煙を防止するための労働衛生上の対策が求められている。
本ガイドラインは、労働者がその生活時間の多くを過ごす職場において、喫煙の影響が非喫煙者の健康に及ぶことを防ぎつつ、喫煙者と非喫煙者が良好な人間関係の下に就業できるよう、事業場において関係者が講ずべき原則的な措置を示すことにより、労働者の健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成の促進を図ることを目的とする。
事業者は、本ガイドラインに沿いつつ、事業場の実態に即して職場における喫煙対策に積極的に取り組むことが望ましい。
2.基本的考え方(解説)
受動喫煙による非喫煙者の健康への影響が指摘されている一方で、喫煙は個人の嗜好に強く関わるものとして、喫煙に対して寛容な社会的認識がなお一部に残る中にあって、職場における喫煙対策を推進するに当たっては、喫煙者と非喫煙者が相互の立場を尊重することが必要である。
喫煙者は、受動喫煙が非喫煙者に対して、健康への影響や不快感、ストレス等を与えることを十分に認識し、他方、非喫煙者は喫煙対策の推進には喫煙者の協力が不可欠であることを十分認識することが必要である。
また、喫煙対策を実効あるものとするためには、労働衛生管理の一貫として組織的に取り組む必要があることから、職場における喫煙対策の進め方について衛生委員会等で検討し、喫煙対策のための施設、設備等を整備するとともに、喫煙者と非喫煙者が守るべき行動基準(以下「喫煙行動基準」という。)を定め、全員の参加の下で喫煙対策を確実に推進する必要がある。
さらに、喫煙対策の方法としては事業所全体を禁煙とする方法(全面禁煙)、時間帯を定めて事業場全体を禁煙する方法(時間分煙)及び喫煙室でのみ喫煙を認める又は喫煙対策機器等の設置によってたばこの煙の拡散を制御し、受動喫煙を防止する方法(空間分煙)の3つの方法があるが、喫煙者と非喫煙者の間で合意の得やすい空間分煙を進めることが適切である。
3.経営首脳者、管理者及び労働者の果たすべき役割。(解説)
職場における喫煙対策は組織の中で実施されるものであることから、当該組織における関係者たる経営首脳者、管理者及び労働者が協カして取リ組むことが重要てあり、それぞれ次の役割を果たすよう努めること。
(1)経営首脳者
喫煙対策についての経営首脳である者(以下「経営首脳者」という。)の基本方針と姿勢は、職場における喫煙対策の成否に大きな影響を与える。このため、経営首脳者は、喫煙対策に強い関心をもって、適切な喫煙対策が労働者の健康の確保と快適な職場環境の形成を進めるために重要であることを、機会のあるごとに全員に周知するとともに、対策の円滑な推進のために率先して行動すること。
また、経営首脳者は、衛生委員会等の場を通じて、労働者の喫煙対策についての意見を十分に把握すること。
(2)管理者
管理職にある者(以下「管理者」という。)の喫煙対策に関する考え方がその職場の喫煙対策の推進に大きな影響を与えることから、管埋者は喫煙対策に積極的に取リ組むこと。
また、管理者は、喫煙行動基準に従っていない者に対しては適切な指導を行うこと。
(3)労働者
喫煙対策は、職場の労働者自らが推進することが特に重要であることから、労働者は、喫煙対策について衛生委員会等の代表者を通じる等によリ、積極的に意見を述べるようにすること。
また、労働組合は、経営首脳者に対する喫煙対策の推進の働きかけ、労働者の喫煙に関する要望等の集約、労働者に対する分煙や健康管理等に関する喫煙教育への参加勧奨等を行うことによリ、事業者が行う喫煙対策が円沿に推進されるよう支援することが望ましい。
4.喫煙対策の推進計画(解説)
喫煙対策を推進するに当たっては、職場における喫煙の実態、職場の空気環境の測定結果、喫煙に対する労働者の意見等喫煙についての現状とその問題点を明確にするとともに、その問題点を解決する具体的な方法等について、当面の計画及び中長期的な計画をを策定すること。
この場合、これらの計画については、経営首脳者の指導の下に、労働者の積極的な協カを得て衛生委員会等で十分に検討し、確実に実施できるものとすること。
5.喫煙対策の推進体制(解説)
喫煙問題をを喫煙者と非喫煙者の個人間の問題として、当事者にその解決を委ねることは、喫煙者と非喫煙者の人間関係の悪化を招くなど、問題の解決を困難にする可能性がある。
このような事態が生ずることを避け、喫煙対策を効果的に進めるには、事業者の責任の下に労働衛生管理の一環として、次のとおリ喫煙対策の推進体制を整備すること。
(1)喫煙対策委員会
喫煙対策は、職場における喫煙者と非喫煙者との人間関係も含めて複雑な要素を有していることから、これを円滑に実施するため、衛生委員会等の下に衛生担当者、喫煙者、非喫煙者等で構成する喫煙対策委員会を設置し、喫煙対策を推進するための合意形成を行う方法を検討するとともに、喫煙対策の具体的な進め方、喫煙行動基準等を検討し、衛生委員会等に報告すること。
(2)喫煙対策の担当部課等
事業者は、喫煙対策の担当部課やその担当者を定め、喫煙対策委員会の運営、喫煙対策に関する相談、苦情処理等を行わせるとともに、各職場における喫煙対策の推進状況を定期的に把握し、問題がある職場について改善のための指導を行わせるなど、喫煙対策全般についての事務を所掌させること。
6.施設・設備(解説)
施設、設備面の対策として、喫煙室や喫煙コ一ナー(以下「喫煙室等」という。)の設置を行うこと。
事業場におけるに建築物の新設や増改築の場合は設計段階から空間分煙を前提とした喫煙室等の設置を計画し、既存の建築物については創意工夫によって喫煙室等の設置を図ること。この場合、喫煙室等は、喫煙者の利用しやすさを考慮して、就業する場所の近くに設けることが望ましいこと。
喫煙室等には、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式又は空気清浄装置でたばこの煙を除去して屋内に排気する方式の喫煙対策機器(以下「有効な喫煙対策機器」という。)を設置し、これを適切に稼働させるとともに、その点検等を行い、適切に維持管理すること。
事務室等個々の場所については、それぞれ次の措置を講ずることによリ、受動喫煙が避けられるようにすること。
なお、たばこの臭いについての対策についても配慮することが望ましいこと。
(1)事務室
喫煙する場合は、喫煙室等で行うこととし、事務室全体に有効な喫煙対策機器を設置した場合に限リ、事務室での喫煙を可能とすること。
(2)会議室
喫煙する場合は、喫煙室等で行うこととし、会議室全体に有効な喫煙対策機器を設置した場合に限リ、会議室での喫煙を可能とすること。
(3)応接室
有効な喫煙対策機器を設置し、応接室での喫煙を可能とすること。これが困難な場合は、外来者に非喫煙ヘの協カを求めること。
(4)食堂
食事時間は食堂を非喫煙場所とすること。ただし、喫煙場所と非喫煙所を区画し、喫煙場所に有効な喫煙対策機器を設置する場合に限リ、当核食堂での喫煙を可能とすること。
(5)休憩室、リフレッシュルーム
喫煙する場合は喫煙室等で行うこととし、有効な喫煙対策機器を設置た場合に限り、当該休憩室、リフレッシュルームでの喫煙を可能とすること。なお、喫煙者と非喫煙者用の休憩室等を別に設置することが望ましいこと。
(6)その他
廊下、エレべーターホール等の共同使用区域は禁煙とすること。
7.職場の空気環境(解説)
たばこの煙が職場の空気環境に及ぼしている影響を把握するため、事務所衛生基準規則に準じて、職場の空気環境の測定を行い、浮遊粉じんの濃度が0.15mg/m3以下及び一酸化炭素の濃度が10ppm以下となるように必要な措置を講ずること。
なお、測定方法等については、別紙「職場の空気環境の測定方法等」を参考とすること。
8.喫煙に関する教育等
事業者は、管理者や労働者に対して、受動喫煙による健康への影響、喫煙対策の内容、喫煙行動基準等に関する教育や相談を行い、喫煙対策に対する意識の高揚を図ること。
また、事業者は、喫煙者に対して、自らのたばこの吸い殻等の処分を適宜行うよう指導することや、定期健康診断等の機会に喫煙によるに健康への影響等に関して医師、保健婦等による個別の相談、指導が行われるようにすることが望ましいこと。
9.喫煙対策の評価
職場における人間関係の中では、非喫煙者が同じ職場内で喫煙行動基準に従わない者の喫煙行動について是正を直接求めることは困難な場合がある。
このため、喫煙対策の担当部課等が定期的に喫煙対策の推進状況及び効果を評価すること。
なお、喫煙対策の評価については、その結果を経営首脳者や衛生委員会等に報告し必要に応じて喫煙対策の改善のための提言を行うことが望ましいこと。
10.その他喫煙対策を進める上での留意事項
(1)喫煙者と非喫煙者の相互理解
喫煙対策を円滑に推進するためには、喫煙者と非喫煙者の双方が相互の立場を十分に理解することが必要であること。
喫煙者は、非喫煙者の受動喫煙に十分な配慮をし、一方、非喫煙者は、喫煙者が喫煙室等で喫煙することに対して理解を示すことが望まれること。
(2)妊婦等への配慮
妊婦及び呼吸器・循環器等に疾患を持つ労働者については、受動喫煙による健康への影響を一層受けやすい懸念があることから、空間分煙の徹底を行う等によリ、これらの者への受動喫煙を防止するため格別の配慮を行うこと。
(3)喫煙対策の周知
喫煙対策の周知を図るため、ポスターの掲示、パンフレットの配布、禁煙場所の表示等を行うこと。
(4)情報の提供等
喫煙対策の担当部課等は、各職場における喫煙対策の推進状況、他の事業場の喫煙対策の事例、喫煙職場の空気環境に関する資料、受動喫煙の健康への影響に関する調査研究等の情報を収集し、これらの情報を適宜、衛生委員会等に提供すること。
また、効果のあった職場における喫煙対策の事例等の情報は、積極的に外部に公表することが望ましいこと。
職場における喫煙に関して問題となるのは、非喫煙者の受動喫煙であリ、労働者の健康の確保及ひ快適な職場環境の形成の促進の二つの関点から労働衛生上の対策が求められているものである。
本ガイドラインは、職場における受動喫煙の防止のために講ずべき原則的な措置を定めたものであリ、これによリ喫煙者と非喫煙者とが良好な人間関係の下に就業が可能となることを目指すものである。また、職場の喫煙対策を進めるに当たっては、個々の事業場の実態に即して取リ組むことが必要である。
なお、快適な職場環境の形成については、労働安全衛生法第71条の3第1項の規定に基づいて「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(平成4年7月1日、労働省告示第59号)(以下「快適職場指針」という。)が公表されておリ、本ガイドラインは、快適職場指針に基づき、空気環境の快適化を図る一環として、職場の喫煙について講ずべき具体的措置を示したものである。
職場における喫煙対策の方法としては、全面禁煙、時間分煙及び空間分煙の3つがある。このうち、空間分煙は、一般的には「喫煙可能場所を定め、他は禁煙とするという場所による分煙」と定義されているが、本ガイドラインでは場所による分煙に限定せず、喫煙場所を特定せずとも「喫煙対策機器等の設置によって受動喫煙が防止できる方法」であれば、空間分煙に該当することとしている。この例として、有効な喫煙対策機器を備えた喫煙コーナーを設置する方法や、たばこの煙を除去できる空気清浄装置を備えた一様換気投備を建物に設置し、床から吹き出す空気を天井の開口部で吸引し、床と天井との間に一様流の空気の流れを形成させ、これによってたばこの煙の周囲への拡散を制御し、受動喫煙を防止する方法がある。
喫煙対策を実行あるものにするには、経営首脳者や管理者が喫煙対策に関心を持って、それぞれの役割を果たすことに加え、労働者の積極的参加が必要である。
経営首脳者の指導の下に計画を実施することとしているのは、組織内で権限を持って行動できる者である経営首脳者の取組が不可欠であるからてある。
衛生委員会等とは、衛生委員会や安全衛生委員会をいうが、衛生委員会の設置が義務づけられていない事業所においてはいては、労使懇談会等、職場の衛生関係事項について話し合われる場をいう。また、喫煙対策の担当部課等とは、総務課や健康管理を担当する部課が該当する。
有効な空間分煙の推進のためには施設・設備面の対策が必要であリ、このための基本的な対策を示したものである。設備のうち「喫煙コーナー」とは、エアーカーテン、衝立等によって区画された喫煙可能な区域であって、当核区域の内部のたばこの煙が当該区域の外部まで及ばない措置が講じれれているものをいう。
なお、喫煙コーナーの設置場所は室の隅に限定しているものではない。
また、「たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する喫煙対策機器」としては、局所排気装置がある。このような喫煙対策機器の設置によって受動喫煙を防止するためには、その設置場所及び喫煙の状況に適した型式、能カを有する機器を選定する必要がある。
さらに、建物に中央管理方式の空気調和設備等が設置されておリ、当該装置によって室内の空気が一定程度環流している場合は、喫煙室等で発生したたばこの煙が換気口に吸い込まれ、当該設備を介して建物全体に拡散することとなるので、所要の対策が必要となる。
個別の対策のうち、食堂に関して、全面的に禁煙の措置を講ずる場合には、喫煙場所と非喫煙場所を区画する必要はないものである。
たばこの煙には様々な物質が含まれているが、空気環境への影響を判定するものとしては浮遊粉塵と一酸化炭素が代表的なものであるので、これらについて測定することとし、目安となる空気環境中の濃度を示した。