たばこ資料

「21世紀のたばこ対策検討会」で使用されている資料より一部抜粋したものです。資料の量が多いので全て掲載することは困難ですが、重要と思われるところから掲載してきます。(家主敬白)
記載ミスなどのご報告は承りますが、内容のご質問はご容赦下さい。(専門外の為)

精神活性物質の使用と社会的規制

精神活性物質は、歴史的には社会に受容された時期もあったが、一般的に規制が強化されつつある。

●人類は自然界に様々な精神活性物質を見出し、その精神活性作用を儀式用の意識変容物質、医薬品、嗜好品などとして利用してきたが、合成物質の登場や濫用の結果として社会的な問題や健康上の被害が明らかになるにつれて、社会的規制の対象となってきた(表1、表2)。
(*脳に作用して、気分、不安、行動、弁別過程、精神的緊張などを変容する作用を有する化学物質)
●代表的な規制薬物であるコカインは、紀元前数千年前よりコカ葉が麻酔に用いられており、インカ帝国では疲労や空腹の特効薬として奴隷に与えられ、現在でも南米諸国ではコカ葉を噛む風習が残っている。1859年にコカインの結晶が単離され、コカイン入りワイン、シガレット、錠剤、コカ飲料などが商品化された。医療関係者や著名人なども、コカインやこれらの商品を常用したといわれている。
●コカインによる中毒や死亡事故が相次いだため、1906年米国でコカ葉の輸入禁止、コカイン含有製品の規制が法規制され、1914年に麻薬取締法で販売・製造・所持が規制されるようになった。1970年後半から、米国を中心として、アルカリ化により吸収効率を高めた「クラック」などのコカイン濫用が再び問題となっている。

表1 代表的な規制薬物と使用形態の変遷

コカイン コカ葉、コカインの精製、コカコーラ、局所麻酔、「クラック」
あへん系麻薬 あへん、モルヒネの精製、ヘロインの合成
大麻 マリファナ、ハッシシ
覚醒剤 メタンフェタミン・アンフェタミンの合成、「ヒロポン」・「突撃錠」

[依存性薬物情報研究班、依存性薬物情報シリーズNo.1,2,3,4]

表2 我が国おける主な薬物と取締法

名称・通称 取締法 名称・通称 取締法
コカイン 麻薬及び向精神薬取締法 覚醒剤 覚せい剤取締法
ヘロイン 麻薬及び向精神薬取締法 大麻(マリファナ) 大麻取締法
睡眠薬 麻薬及び向精神薬取締法 有機溶剤(一部) 毒物及び劇物取締法、有機溶剤中毒予防規則
LSD 麻薬及び向精神薬取締法 アルコール
MDMA(エクスタシー) 麻薬及び向精神薬取締法 たばこ (ニコチン:毒物及び劇物取締法)
国際的な協力のしたに規制薬物に関わる不正行為を助長する行為などの防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法の特例等に関する法律(麻薬特例法)

表3 国際的な薬物規制への取り組み

国際条約 麻薬に関する単一条約(単一条約) 1961年採択・1964年発効 麻薬、あへん、大麻
向精神薬に関する条例(向精神薬条約) 1971年採択・1976年発効 幻覚剤、鎮痛剤、覚せい剤、睡眠薬、精神安定剤
麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約) 1988年採択  
国際機関 国連:国連総会(GA)、国連経済社会理事会(ECOSOC)、国連麻薬委員会(CND)、国連麻薬統制委員会(INCB)、国連薬物統制計画(UNDCP)、国連貿易開発会議(UNCTAD)
世界保健機関(WHO)」:依存性薬物専門家会議、薬物濫用対策計画(PSA)
国際オリンピック委員会(IOC):カルガリ勧告

薬物依存の定義とメカニズム

薬物の依存形成性の要因の1つである強化作用は実験的に定量でき、ニコチンはコカイン、モルヒネ、アンフェタミン等に匹敵する。

●薬物依存とは、「精神活性物質により、自己あるいは他者を障害する危険性があるにもかかわらず、自己の行動がコントロールされるようになった場合、依存が生じている」といい、診断基準が確立している。(表1)
●薬物の依存形成性の強さは、実験室内の人や動物においては、薬物自体の要因で規定されるが、実験室外の人においては、薬物の入手可能性、価格、社会的容認度などの社会環境因も影響する。薬物依存の本質の一つである「強化**」作用は実験的に定量な比較が可能であり、ニコチンはコカインやモルヒネ、アンフェタミン等に匹敵する(表2)。同一薬物では、投与方法や他の強化刺激(アセトアルデヒドなどの薬物・環境等)も関係する。
(**ある反応の確立を増加させる何らかの現象、快楽のような感情的価値をともなう場合「報酬」ともいう)
●「強化」のメカニズムには、感情や食・性・薬物依存など広範な活動の強化に関わる中脳辺縁系のドパミン作動性神経の活性化が共通している(表3)。コカインやアンフェタミンは、中脳皮質辺縁系におけるドパミンの取り込み抑制または放出刺激により、細胞外ドパミン量を増やす。モルヒネやヘロインは、オピオイド受容体を介してドパミン作動神経を活性化する。ニコチンには、ドパミン放出促進と取り込み阻害の両面が認められる。

表1 薬物依存の診断基準

(1)原則的基準 (2)補足的基準
嗜癖行動にしばしば見られる特徴 依存性形成薬物にしばしば見られる特徴
・高度に調節された、あるいは脅迫的な使用
・精神活性作用
・薬物強化行動
・固定化した使用パターン
・有害な影響にも関わらず使用
・中断後の再発
・薬物への反復する渇望
・耐性
・身体依存
・快楽(多幸)作用

[U.S.Surgeon General's Report 1988]

表2 アカゲザルの薬物静脈内自己投与実験(強化作用の強度判定)

 

ニコチン

コカイン

コカイン

モルヒネ

モルヒネ

アルコール

アンフェタミン ジヒドロオデイン
投与単位(mg/kg/inj) 0.25 0.11 0.25 0.25 0.5 800 0.06 1.0
最終レバー押し頻度
(強化作用の強さ指標)
1350
〜2690
1600
〜6400
2690
〜9050
1350
〜1600
1600
〜6400
1600
〜6400
1350
〜2690
950
〜1900

[Yanagita1983,柳田1992]

表3 薬物依存の神経生物学的メカニズム

薬物 作用 結果
オピエート(モルヒネ、ヘロイン) オピオド受容体の刺激 ドパミン系および非ドパミン系の活性化
コカイン トランスポータ蛋白のドパミン取りこみ阻害 中脳皮質辺縁系のドパミン系でドパミン放出
アンフェタミン ドパミン放出の刺激 中脳皮質辺縁系のドパミン系でドパミン放出
アルコール(エタノール)、パルビツレート、ベンゾジアゼビン γアミノブチル酸(GABA)受容体機能の促進、N‐メチル−D−アスパルテート(NMDA)グルタミン酸受容体機能の抑制 GABA、グルタミン酸、ドパミン、オピオイドベプチド、セロトニン等の複数の神経伝達物質の相互作用
ニコチン ニコチン性アセチルコリン受容体の刺激によるドパミン放出促進と取り込み阻害 中脳皮質辺縁系のドパミン系とオピオイドベプチド系の活性化

[Koob G.F.et al.1997]

ニコチンの依存性

たばこに含まれるニコチンの依存性は国際的には規制薬物の枠組みで検討されはじめており、低タール製品でも実際のニコチン摂取量は表示量を数倍上回ることが示されている。

●ニコチン依存は、他の薬物依存との共通の臨床的病態や動物も出るの存在、神経生物学的機構の解明等により、薬物依存であることが確立されている。特に、たばこは、ニコチン依存の転帰としての健康被害が重大であり経済損失も甚大であることから、医学的支援とともに社会的規制の対象となってきた。(表1)。世界保健機関の薬物依存専門会議は、国際条約における規制薬物としてのニコチンの取り扱いについて検討し、医療用のニコチン使用の検討の必要がないが、たばこ製品についてはプレレビューが必要と結論した。
●人におけるニコチン依存の形成過程は、薬物自体の作用に他に、摂取方法(用量・速度)による依存形成の違いや、環境刺激や味・香り、同時に摂取される強化薬物などが2次強化刺激となるため複雑である。ニコチン自体の作用と用量(濃度)が正の強化作用を有するため、喫煙者は銘柄の選択や喫煙様式の調節により、必要な容量を摂取するようになる。最近シェアが増加している低タール・ニコチン銘柄は、実際の喫煙条件では標準測定法による値の2〜4倍のニコチンが生じ、低ニコチンの表示と相関していないことが示されている。
●米国では喫煙者の70%以上がDSM-IVやICD-10によるニコチン依存、我が国でも、喫煙者の約40%がICD-10によるニコチン依存と推定されている。離脱症候群を抑えながら禁煙に導く目的で、代替ニコチンデリバリーシステムとしてニコチン製剤(ガム,パッチ、点鼻薬、吸入薬)が開発されており、我が国でもニコチンガムが承認され、ニコチンパッチは申請中である。

表1ニコチン依存に関する認識の変遷

米国公衆衛生総監報告書 世界保健機関(WHO) 国際的疾病分類・診断基準
1964年:「たばこの常習的使用は・・・ニコチンの薬理学的作用によって強化され、習慣性をもつようになる」
1979年:「喫煙は・・・典型的な物質乱用依存である」
1986年:「無煙たばこに含まれるニコチンは依存性がある。」
1988年:「紙巻たばこと他のたばこの形態は依存性を有する。ニコチンはたばこに含まれ、依存性を引き起こす物質である。たばこ依存性を規制する薬理学的行動学的過程は、ヘロインやコカインのような薬物への依存を決定する過程と類似している。」
1974年:薬物依存専門委員会第20回「たばこは依存形成性があるが、他の薬物とは様式が異なる。」
1993年:薬物士存専門委員会第28回報告「ニコチンは依存形成性があり、たばこにより重大な健康被害が生じ、医療上のニコチン使用があることから、検討の対象とした。たばこやアルコールなど合法的な薬物、その他精神活性物質は統合的な対策が必要であり、国際的な貿易協定においても考慮すべきである。
1997年:薬物依存専門委員会第30回報告「たばこは依存性があり、疾病や死亡をもたらすことから重大な公衆衛生上の問題である。国際条約でたばこを麻薬あるいは向精神薬として規制できるかどうか検討するクリティカルレビューの前段階として、1998年の31回会合においてプレレビューする必要がある。ガムやパッチなど医療上のニコチン使用については、重大な濫用が見られないことから、クリティカルレビューは必要ないと結論。」
1978年:国際疾病分類 ICD-9「依存性のない物質乱用」に分類(精神毒性がないと考えられていた)。
1987年:米国精神医学会診断基準 DSM-III-R(アルコール、アンフェタミン、カフェイン、大麻、コカイン、覚醒剤、吸入剤、アヘン類等にならび)「精神活性物質による器質性精神障害」において 290.00ニコチン離脱、精神活性物質異常用障害として305.10ニコチン依存を分類。
1992年:国際疾病分類 IDC-10「精神作用物質による精神および行動の障害」において、F17.-たばこ使用による精神および行動の障害としてF17.1有害な使用、F17.2依存症候群、F17.3離脱状態を分類。
1994年:米国精神医学会診断基準 DSM-IV「物質関連障害」においてニコチン使用障害として、305.10ニコチン依存、ニコチン誘発性障害として292.0ニコチン離脱、292.9特定不能のニコチン関連障害を分類。

公衆衛生領域におけるリスク管理

日常的に人体に摂取される物質は、たばこ製品を除き、公衆衛生上の規制の対象になっている。

●食品、水、空気、医薬品等、およそ人体に摂取される物質は、公衆衛生上の規制の対象となっている。(表1)。
これらの規制は、近年リスク管理の考え方に基づいて実施されつつあるが、一般に規制値の設定は、リスク評価をもとに、閾値あるものについては最大無作用量等に十分な安全係数(通常1/100〜1/1000)を乗じて基準値を求め、発ガン物質のうち遺伝子毒性をもつイニシエーターなどについては閾値が存在しないなどと考え、acceptable riskとして生涯リスクが10-5〜10-7のれベルになるよう規制する方向にある。(表2)
●実際には化学物質によって得られる便益とリスクを比較し、社会が許容できるものであれば必要悪として受け入れられているが、リスクをできるだけ下げ、かつできるだけ大きな便益を得るのが理想であること。環境汚染の場合にはリスクを負う者は必ずしも便益を得る者ではないことが多い。
●紙巻たばこは葉たばこ、人工原料や添加物などを原料に、種々の加工がされた工業製品である(表3)

表1 我が国における生活関連物質と公衆衛生上の規制の例

生活関連物質 公衆衛生上の規制 生活関連物質 公衆衛生上の規制
食品 食品衛生法 医薬品 薬事法
食品添加物 食品衛生法(原則内容表示) 医薬部外品 薬事法
食品中の農薬等 食品衛生法 化粧品 薬事法
食器 食品衛生法 空気 大気汚染防止法/建築物における衛生的環境の確保に関する法律/廃棄物の処理及び清掃に関す津法律
おもちゃ 食品衛生法
飲料水 食品衛生法/水道法 職域 労働安全衛生法

表2 我が国の水と大気における基準の例

水質基準 基準値 基準値の根拠
(WHO指針)
大気環境基準 基準値 基準値の根拠
砒素 10μg/l 発ガン(L*)6×10-4 二酸化硫黄 1時間の1日平均値が0.04ppm以下、且つ1時間値が0.1ppm以下  
ベンゼン 10μg/l 発ガン(L)10-5 二酸化窒素 1時間の1日平均値が0.04ppm以下から0.06ppm、又はそれ以下  
四塩化炭素 2μg/l 発ガン(L)10-5 トリクロロエチレン 0.2mg/m3  
クロロホルム 60μg/l 発ガン(L)10-5 テトラクロロエチレン 0.2mg/m3  
トリクロロエチレン 30μg/l 発ガン(L**) ベンゼン 3μg/m3  
ホルムアルデヒド 80μg/l 慢性毒性(TDI) *L:閾値なし。**T:閾値あり。
セレン 10μg/l 慢性毒性(TDI)

表3 紙巻たばこができるまで

原料葉たばこの調製→加工処理→ブレンド→裁刻→加香→巻上→包装
・原料葉たばこの種類:Blond tobacco.Dark tobacco,Oriental leaf
・その他の原料たばこ:Tobacco sheet,Expanded tobacco,Aftifical tobacco,Tobaccoextracts and nicotine
・添加物・・約600種類(米国):ブレンドへの添加、たばこシート、巻紙、フィルター、包装などへの添加

[日本たばこ協会、Slade 1993,Tobacco Reporter 1996]

たばこの健康影響

たばこほど、喫煙者本人のみならず周囲の人々においても、多くの疾患と関連しているリスク要因は他にない。

●諸外国の研究はもとより、我が国の疫学研究においても、喫煙と種々の疾患との関連が明らかにされ(表1)、喫煙本数が多いほど、また、喫煙開始年齢が早いほどリスクが高まる。女性の喫煙は、男性と同様の喫煙関連疾患に加えて、女性特有の疾患のリスクを高め、妊婦の喫煙は次の世代(胎児)に対しても害を及ぼす。
●我が国の最近の疫学研究では、喫煙は若年群(30‐60歳)の総死亡率を高め、循環器疾患の死亡リスクは、男性若年群において喫煙者は非喫煙者の7倍、1日41本以上喫煙では10倍であった。30‐74歳の脳卒中死亡リスクは、男性では1日21本以上喫煙で非喫煙者の9倍、女性では喫煙者は非喫煙者の3倍であった。
●先進7ヶ国会議医学部会の分科会であるEvidence Based Medicine部会では、医学における証拠能力の指標として対照群を有する疫学研究を最も根拠のあるものとする評価方式を採用している(表2)

表1 喫煙の相対危険度(非喫煙者を1とした場合の喫煙者の死亡・罹患リスク)

    日本(計画調査、1966-82) 米国(がん協会CPS-U,1982-86)
   
・全死因   1.29 1.31 2.34 1.58
・がん 肺がん 4.45 2.34 22.36 11.94
  喉頭がん 32.5 3.29 10.48 5.24
  口腔・咽頭がん 3.00 1.05 27.48 5.59
  食道がん 2.24 1.75 7.60 10.25
  膵臓がん 1.56 1.44 2.14 2.33
  膀胱がん 1.61 2.29 2.86 2.58
  子宮頚部がん - 1.57 - 2.14
・循環器疾患 虚血性疾患 1.73 1.90 1.94 1.78
  大動脈瘤 2.35 4.43 4.06 3.00
  末梢血管閉塞症 1.75  
  脳血管疾患 1.08 1.18 2.24 1.84
  クモ膜下出血 1.82 1.71
・呼吸器疾患 慢性気管支炎・肺気腫     9.65 2.18
  気管支喘息 1.83 4.02
・妊娠・出産 不妊(相対危険度,2.4-3.4)、自然流産(1.1-1.8)、早産(1.2-3.3)、周産期死亡(1.1-1.6)、
  低体重児(1.3-2.6)、先天性異常(1.3-2.6)、妊娠合併症
・その他 白内障(2.2)、骨粗しょう症(1.3)、早期閉経、体重減少、しわ

[Hirayama 1990,Surgeon General' Report 1989]

表2 証拠の質の評価方式

T: 最低1つ以上の、正しくデザインされた無作為コントロール研究から得られた証拠。
U-1:無作為でないがよくデザインされたコントロール研究から得られた証拠。
U-2:1つ以上の施設または調査団体による、よくデザインされたコホート研究または症例対照研究から得られた証拠
U-3:介入する場合としない場合についての、数回連続の調査から得られた証拠。
V:臨床的経験、記述的研究、熟達した委員会の報告に基づいた、社会的地位のある権威者の意見。

[U.S.Preventive Services Task Force,1989]

●受動喫煙によるリスクは、米国環境保護庁(EPA)により環境たばこ煙(ETS)は人体に発がん性のある「A級発がん物質」と分類され、がん、呼吸器疾患、循環器疾患、小児の発育毒性について因果関係が立証されている。(表2)
●ニコチンの代謝産物であるニコチンが受動喫煙の指標として広く用いられているが、我が国の住民検診の対象者においても、家庭と職場の両方で曝露の程度の高い集団ほど、尿中ニコチンの検出される割合が高いことが示されてる。(図1,2)。さらに、喫煙者がいて子供の前でも吸う家庭では、受動喫煙のない家庭に比べて、未就学児において血中鉛濃度が有意に高いことが示されている(図3)。

表2 環境たばこ煙(ETS)による健康被害

健康被害 因果関係が証明されている 因果関係が示唆されている
発育への影響 低出生体重児、乳幼児突然死症候群 自然流産、認知・行動障害
発がんへの影響 肺がん、鼻腔がん 子宮頚がん
呼吸器への影響 小児の気管支炎・肺炎、喘息誘発・増悪、慢性呼吸器症状、滲出性中耳炎、成人の眼や鼻への刺激症状 嚢胞性線の増悪、肺機能の低下
循環器への影響 心疾患死亡、急性・慢性の冠状動脈性心疾患罹患    

[EPA 1992,OEHHA 1997]

 

●最近ダイオキシンの毒性、発ガン性や生殖毒性、内分泌撹乱性など明らかになり、食品、水、大気等の環境からの日常的な摂取が問題になっているが、環境中のダイオキシンについては、厚生省や環境庁により種々の基準値が設けられている。紙巻たばこも燃焼によりダイオキシンを発生するが、最も毒性が強く、国際がん研究機構(IARC)の評価で人に対して発ガン性を示す「1」ランクである2,3,7,8-TCDDも検出されている。たばこ煙中のダイオキシン量は、個人曝露においてもダイオキシン類の平均的な1日摂取量約0.3-3.5pg-TEQ/kg/day の相当部分を占め、また、環境中への放出量としても無視できない大きさである。

我が国におけるダイオキシンに関する基準値

厚生省1日摂取許容量 10pg-TEQ/kg/day
環境庁健康リスク評価指針値 5pg-TEQ/kg/day
環境庁大気環境指針 年平均値0.8pg-TEQ/m3
厚生省ごみ焼却炉の排出基準 (新ガイドライン)0.1ng-TEQ/m3N
(緊急対策ガイドライン)80ng-TEQ/m3N

*TEQ(Toxic Equivalency Quantity):毒性等価換算濃度。ダイオキシン類は異性体により毒性が大きく異なるため。
最も毒性の高い2,3,7,8-TCDDを基準とした換算係数をかけ、他の異性体の毒性を相対的に評価した濃度。

たばこ煙中のダイオキシン

  測定値 1日摂取量(20本喫煙、体重50kgと仮定)
Total dioxins 18pg-TEQ/20本 0.36pg-TEQ/kg/day
2,3,7,8-TCDD 0.56pg/20本 0.01pg/kg/day

[測定値はLofroth 1992]

WHOの勧告する総合的たばこ対策

1.子供のたばこ依存の防止(※)・・・WHA23.32,WHA39.14
2.たばこの消費抑制のため、たばこ税を価格や所得の成長より速く増額する経済政策(※)・・・WHA29.55,WHA39.14,WHA43.16
3.たばこ税増税分の一部を、他のたばこ対策や健康増進方策の財源へ転換・・・WHA29.55
4.健康増進、健康教育、禁煙支援プログラム、保険医療従事者や保険医療機関の禁煙・・・WHA24.48,WHA29.55,WHA39.14
5.環境中のたばこ煙(ETS)への不随意曝露[受動喫煙]からの保護(※)・・・WHA39.14,WHA43.16,WHA44.26
6.たばこ使用を維持し推進するような社会経済的、行動的、その他の報償の排除・・・WHA39.14
7.間接及び直接のたばこ広告、販売促進、スポンサーシップの排除(※)・・・WHA31.56,WHA39.14,WHA43.16
8.たばこ製品の規制、たばこ製品や残存する広告への顕著な健康警告文の掲載、たばこ製品やたばこ煙中の毒性成分の制限及び定期的な報告(※)・・・WHA39.14
9.たばこ耕作及び製造に対する経済転換の推進・・・WHA23.32,WHA24.48,WHA39.14
10.たばこ問題の効果的な管理、監視、評価・・・WHA23.32,WHA29.55,WHA39.14         (※)は法的規制が必要な方策

8カ国デンバー・サミット共同コミュニケ

児童の環境衛生

「我々の児童の健康を守ることは、共有された基本的価値の一つである。世界中の児童は、環境中の様々な危険要因により健康に対する大きな脅威に直面しており、我々は児童が環境の脅威に対して特に脆弱であることを認める。我々の政府は、環境リスク評価及び基準設定の作業の対象に明示的に児童を組み込むとともに、情報交換の強化、微生物学的見地からも、安全な飲料水の提供、児童が鉛、たばこの煙、その他の大気汚染物質にさらされることを減らすために強力して取り組む。

[Denver Summit of the Eight,Communique,1997]

第10回たばこか健康か世界会議決議

1.たばこ使用の中止:公衆衛生関係機関は、たばこ製品の使用中止(禁煙)のために精力的に活動を行うこと。
2.WHOたばこ対策のための国際枠組み条約:世界保険機関と各国政府は、国際枠組み条約を公式化すること。
3.国際連合:国連事務総長は、国連と国連機関の最高位において、たばこ対策の問題を優先事項として扱うこと。
4.国内たばこ対策の国際的配慮:国際的影響を考慮した対策が世界的な健康被害の減少に寄与すること。たばこ産業は、たばこに基づく損失費用を弁済すること。
5.女性と開発途上国:中途開発国の代表の参加:たばこ対策に関わる全ての組織(例:WHO専門家会議等)、今後のたばこか健康か世界会議は、女性と途上国ならびに中途開発国の代表の参画を増やすこと。
6.たばこの人的、社会的、環境的コストの十分な反映:たばこ関連疾患の世界的な監視体制の確立。たばこの社会コストを考慮した完璧な経済分析を行うための共同研究を実施する多面的政府機関と開発銀行の設立。大蔵省、開発銀行や国際通貨基金などは、たばこによるコストは全て、税金により価格に反映すべきことを確認すること。
7.たばこを有害物質として特別に指定し規制すること:たばこは製造業者の意図したように用いた場合、非常に有害でかつ強力な依存性を発揮する唯一の物質である。全ての政府は、たばこ製品を特別に危険で正常な消費製品として扱えいないことを認識し、また製品と煙の成分を明らかにし、産業を法律による規制対策に結びつけること。
8.たばこのない世界を目指して協力連携を拡大すること:たばこ対策に関わる全ての非政府機関は、INGCAT(反たばこ国際非政府組織連盟)を支援し、国際的なネットワークが形成されること。

[Resolutions of the 10th Wold Conference on Tobacco or Health,Beijing,1997]

世界医師連盟勧告

各国医師会は、たばこ関連疾患の低減のために以下の活動を行うこと。

1.反たばこ政策を選択し、表明すること。
2.各国医師会のあらゆる会合において喫煙を禁止すること。
3.専門家や一般国民にたばこの健康被害についての教育プログラムを開発すること。
4.個々の医師が禁煙の役割モデルとなるよう奨励し、保険医療機関を禁煙とすること。
5.医学部、研究所、研究者は、たばこ産業から助成金を受けてはならないこと。
6.たばこ対策のための法律制定を支援すること:健康警告表示、公共の場所の喫煙規制、広告・販売促進活動の規制、青少年への販売禁止、航空路線の禁煙と免税たばこの販売禁止、たばことたばこ製品への政府補助金の禁止、たばこと健康に関する調査研究の実施、新しい形態のたばこ製品の販売の禁止、たばこ製品の増税と保険医療対策費への充当。

[Wold Medical Association Statement on Health Hazards of Tobacco Products,1998]


非喫煙者の保護対策(斜体は行政指導・自主的取組み

公共交通機関

公共の場所

職域

保険医療機関 児童施設 飲食店

公務職場

民間職場

日本 民間鉄道協会・航空機(2時間以内国内線)

厚生省・指針1996
東京都・分煙化計画(都立施設)1997

人事院・指針
1997、郵政省・分煙化1997

労働省・指針
1996

アメリカ

 

ニューヨーク市

カリフォルニア州

バス・航空機(6時間以内)・
列車:禁煙

原則禁煙(喫煙所設置)

原則禁煙(喫煙所設置)

  ホワイトハウス・軍等:禁煙 原則禁煙(喫煙所)を検討
  

禁煙

禁煙

原則禁煙
(喫煙所)

原則禁煙
(喫煙所)

原則禁煙
(喫煙所)

禁煙 禁煙 禁煙

禁煙(換気別の喫煙所)

禁煙(換気別の喫煙所)

禁煙(換気別の喫煙所)

イギリス タクシー:禁煙

「実施要綱」(原則禁煙、非喫煙権>喫煙権)1991

分煙

分煙

イタリア 禁煙 禁煙 禁煙      

自主規制

カナダ 航空機・バス:禁煙、列車・船舶:分煙

禁煙

禁煙

  

原則禁煙
(喫煙所)

原則禁煙(喫煙所) 禁煙39%,分煙41%(1994)
ドイツ 列車等の禁煙席、バス:禁煙

自主規制
「非喫煙者のための行動計画」1990

自主規制

自主規制
義務規程

フランス 原則禁煙(喫煙席設置)

原則禁煙(喫煙場所設置)

分煙(非喫煙者優先)

原則禁煙(喫煙所設置)

原則禁煙(喫煙所設置)

欧州連合 がん対策の一環として、原則禁煙(非喫煙者の権利を優先)の決議1989      
オーストラリア 多くの州:禁煙 殆どの州:禁煙 殆どの州:禁煙 首都域:禁煙 禁煙 ビクトリア州:禁煙

[Legislative Responses to Tobacco Use,1991,Legislative Action to Combat the World Tobacco Epidemic,1993,たばこと健康対策:日本・諸外国資料集,1996,Tobacco or Health:A Global Status Report,1997,以下同様]

以下工事中