【全ての癌の原因は喫煙(タバコ)である】

−その証明と新しい発癌論−

ホームページ制作者:埼玉県立がんセンター呼吸器科 野口行雄

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平成11年8月

 癌の原因は喫煙です。従来言われてきた「原因不明説」(未だ明らかにされていない原因説)、あるいは「感染原因説」(胃癌のヘリコバクター・ピロリ感染説、子宮癌のパピローマ・ウィルス感染説、肝癌のB・C型肝炎ウィルス感染説など)は嘘です。私も今まで嘘を教えられて来たのです。なぜ嘘かと言うと、多元論であるからです。癌というのは罹患臓器が異なっていても、共通の疾患概念を持つ病気です。従って、その原因としては、多元論は誤りで、一元論でなければなりません。

 日本国政府の「タバコは嗜好品である」との見解は、国民の健康を守る義務を放棄した、国民への裏切り行為です。また、わが国の裁判所は、わが国の研究者が、「タバコだけが癌の原因ではない」、と(嘘と気づかずに)言っていることを盾に取り、JT・その筆頭株主の大蔵省、即ちわが国政府の責任を認めていないのです。

 わが国の癌患者は国家の犯罪行為による犠牲者とも言えるのです。裁判をおこし、国家賠償を求めるべきです。それとも泣き寝入りしますか? 癌の潜伏期間は20〜30年ですから、今でも日本専売公社(国の収益を目的としてタバコと塩の専売事業を行なってきた公共企業体)時代の健康被害です。

 米国では、タバコ会社に健康被害に対する莫大な賠償金が課せられています。米国で販売されている日本の銘柄のタバコには、喫煙は肺癌の原因である、と(英語で)大書されています。米国が異常なのか、日本が異常なのか、よく考えるべきです。日本がデタラメなだけです。米国では、喫煙は肺癌の原因である、とタバコの外箱に書かなければタバコを売ることができないので、JTは不本意ながら印刷して出荷している、とでも言うのでしょうか?

 先ず、肺癌についての彼我の考え方を比較してみましょう。

主として欧米の多数の疫学成績

1.男子の肺癌は直接喫煙と関連性が高い

2.女子の肺癌は配偶者の喫煙(=間接喫煙)と関連が高い

  (女子は腺癌が最多)

わが国の通説(金科玉条)

1.肺癌において、喫煙は扁平上皮癌との関連性は高いが、腺癌との関連性は低い。

2.癌には未だ明らかにされていない原因がある。

3.癌には遺伝的素因がある。

 従来、わが国の癌学者・肺癌学者は、この通説を金科玉条として来たのです。それはわが国の癌学者・肺癌学者が疫学成績を全く無視しているためであり、わが国の疫学者も癌学者・肺癌学者の考えの誤りを指摘しないためです。疫学者の出した成績を疫学者自身が、どうして、なぜ、そのような(女子の肺癌が配偶者の喫煙と関連性があること)成績が出たのかの理屈・理論の構築ができなかったことも、わが国で無視されてきた最大の原因と思われます。

 私は、その理論を新たに見いだすことができたわけです。

 タバコには、両切り紙巻きタバコとフイルター付き紙巻きタバコがあります。フィルターの有無で肺内吸引喫煙粒子の性状が異なります。肺内吸引粒子がフィルターで濾過され、濾過粒子は肺の末梢領域に到達しやすくなり、腺癌ができやすくなったのです。両切りタバコの粒子は肺門部に着床しやすいので、扁平上皮癌ができやすかったのは言うまでもありません。間接喫煙は経鼻吸引です。鼻腔には鼻毛によるフィルター効果があります。間接喫煙で腺癌ができやすいのは当然です。ですから、わが国の通説は誤りなのです。

 次の図を見て下さい。喫煙粒子の上気道・肺内沈着のモデルです。口の中に付着した喫煙粒子は飲み込まれますので、消化管癌の原因になっていることも明らかです。その証明は後で詳しく説明することにしましょう。

 両切りタバコでは肺門部の気管支に喫煙粒子が着床しやすいこと、フィルタータバコでは肺の末梢領域に喫煙粒子が着床しやすいことが、標識エアゾール粒子の吸入モデルで明らかです。

 女子の喫煙は、深く吸い込まない、ふかし喫煙がその特徴です。このことは、女子喫煙者の肺癌は、遅れて出来てくること、同じく女子喫煙者の胃癌は、肺癌よりも早く出来ることが予測されます。肺には少ししか入らず、たくさん飲み込まれるはずだからです。

 近年、男子の肺癌による死亡者数が、胃癌による死亡者数を上まわって来たことが報じられています。上の図を見れば、その理由は明らかです。フィルタータバコでは、喫煙粒子の嚥下量が減少しているのです。

 癌検診は癌の予後を変えない、とされています。即ち、定期的に検診を受けて癌が見つかっても、何らかの症状があって病院・診療所を受診して癌が見つかっても、助かるか、助からないかには全く関係ないということです。ですから死亡者数の増減はそのまま患者数の増減を意味することになります。即ち、男子胃癌死の減少は喫煙粒子の嚥下量減少の反映なのです。

 癌の予後の改善に役立たない検診は意味がありません

 次に、肺癌の分類を見てみましょう。癌の潜伏期間は20年〜30年とされていますから、フィルタータバコの流行の影響は遅れて出てくるはずです。わが国では昭和35年のハイライトがフイルタータバコの最初です。

 米国のメイヨー・クリニックの成績は両切りタバコの時代で、男子では扁平上皮癌が最も多く、最近の埼玉県立がんセンター呼吸器科および米国の成績は、男子も腺癌が最多となっています。女子は昔も今も腺癌が最多です。女子で腺癌が最も多いのは、間接喫煙のためです。毒性の強い副流煙を鼻から吸い、鼻毛によるフイルター効果で、喫煙粒子が選択されて肺の奥深く吸引されるために腺癌が多いわけです。

 私の抗生物質吸入に関する研究で、ペニシリン・セフェム剤は気管支に分布すること、アミノ配糖体剤は肺胞まで分布することが明らかになっています。それぞれのエアゾール粒子の物理化学的性状が異なっているためです。

 マウスに肺炎桿菌による致死的肺炎をつくります。この肺炎を、抗菌力があるセファゾリンとゲンタマイシンでそれぞれ治療します。投与方法ははネブライザーによる吸入です。セファゾリン治療群は救命率が非常に低く、ゲンタマイシン治療群はほとんどが救命できます。薬剤が肺炎病巣に到達し得るかどうかが治療効果のポイントになります。上図のように考えられるはずです。

 両切りタバコの場合がペニシリン・セフェム剤に、フィルタータバコの場合がアミノ配糖体剤に該当することになります。

 上の表は、埼玉県立がんセンター呼吸器科の肺癌患者の喫煙歴です。従来は、この成績から単純に統計処理をして、扁平上皮癌は喫煙と関連性が高いが、腺癌は喫煙との関連性が低いとデタラメな結果を出していたのです。間接喫煙が経鼻吸引であることを知らなかったのか、無視したのでしょう。

 今でもかたくなに腺癌は喫煙と関連性がないと信じている肺癌学者が多数を占めます。そして、彼らは多くの人々に、もちろん大学の講義でも、教科書でもそのように教えます。彼らもそのように教えられたからです。私がいくら「ウソだ」と言っても、なかなかわかってもらえません。

 癌の潜伏期間が2030年とされていますから、タバコをやめてからも癌が発病します。禁煙10年で激減しますが、30年までは出続けるのです。一般の方は、癌に潜伏期間があるとは考えていませんから、例えば1ヶ月前にタバコを止めていると、患者さんは「タバコを吸っていない」と診察室では大いばりで言います。癌が突然できたものと考えているわけです。

 上図は、女子喫煙肺癌(腺癌)が遅れて出来てくることを示す成績です。予測通りです。46.5才以降で各曲線が分かれていくことは象徴的です。ここまでは(癌の潜伏期間約25年前の21才頃まで)、親と同居しているわけです。父親の喫煙が原因で、その後は本人の喫煙か配偶者の喫煙が原因となっているわけです。非喫煙男子腺癌は患者数が少なくて、グラフになりません。

 次に、喫煙歴を調べるのに全患者のカルテを検索することは不可能です。そこで、喫煙歴が調査されている肺機能検査症例(多くは術前検査として施行される)を分析することにしました。1985年から1997年までの喫煙歴をデータベースソフトに入力し、そのなかから癌の確定診断が得られた症例(約1万例)を抽出しました。次の表が喫煙歴一覧表です。

 男子喫煙率は91%、女子喫煙率は23.5%でした。この中から女子の胃癌と肺癌症例の年齢分布を見ました。

 予測通りの年齢分布です。喫煙者では胃癌患者のほうが肺癌患者よりも若く、非喫煙者では差がありません。

 肺機能検査症例の確定診断を得るために出力した5万件の入院病名情報データから約2万例の癌患者を抽出し、その患者数をプロットしてみました。患者数は喫煙粒子の体内分布を見事に反映する成績となっています。子宮粘膜は28日周期でいれかわっています。子宮粘膜の間接曝露は低濃度ですが、感受性が高いので癌ができやすいのです。年齢分布も胃癌や肺癌と比較して非常に若いのが特徴です。乳腺も月経周期に連動しています。喫煙粒子は主として消化管粘膜から吸収されると考えています。アンピシリン(ペニシリン)は消化管から吸収されます。喫煙粒子(タール)はアンピシリンと類似の性質と思われます。

 欧米の数多くの疫学成績では、肺癌に限らず、喫煙と胃癌・膵臓癌・子宮癌・前立腺癌・膀胱癌などとの因果関係を指摘しています。どうしてそのような成績が出るのか、その理屈が今日までなかったのです。上に示したグラフを見れば、その理屈がわかるはずです。喫煙粒子の体内分布を反映する、ということです。

【癌の新しい分類学】

癌患者数は喫煙粒子の体内動態に応じた分布をとる。

●直接曝露臓器癌

  患者数は曝露回数・濃度に比例し、通過速度に反比例する

  消化管癌>肺癌(下気道癌)>上気道癌

●排泄臓器癌

  肝・胆道癌≒腎・尿路癌

●間接曝露臓器癌

  高感受性:女子=乳腺、子宮

  中感受性:男子=前立腺、女子=甲状腺、卵巣

  低感受性:その他の臓器

●経胎盤曝露癌

  小児癌

 癌しか取り上げていませんが、私は血液の悪性疾患、即ち白血病も、肉腫も、脳腫瘍なども、喫煙あるいは間接喫煙が原因であると考えています。残念ながら、それを証明するデータがないのです。

 抗生物質の吸入実験成績をもとに、喫煙粒子の消化管曝露濃度を推定することにしました。以下に示す成績が、私の日本胸部疾患学会(現日本呼吸器学会)雑誌に既に報告している実験成績です。

喫煙粒子相対濃度推定の根拠となる成績

ABPC (Ampicillin)の特徴

●気管支・消化管吸収

●静脈内投与 2g 1時間点滴静注後血中濃度 100μg/ml

ABPC 500mg (=50mg/ml)の超音波ネブライザー吸入実験成績

●5名の男子学生の測定値(平均値)

   血清中濃度(2時間後) 2.84μg/ml

   尿中濃度(4時間後)  0.28mg/ml

●慢性肺気腫患者の吸入後の喀痰中濃度

   吸入終了後30分の喀出痰中濃度 12mg/ml

喫煙粒子=dry particle、吸入抗生物質粒子=wet particle

 この成績をもとに、以下のごとく消化管各部位の曝露濃度を推定し、その通過速度を食物通過時間と消化管の長さから算出しました。

 そして、患者数と曝露指数(=濃度÷速度)との間の相関をみました。

 有意な相関が男女とも認められました。従って、消化管癌も喫煙が原因であることがわかりました。文頭に記したようにヘリコバクター・ピロリが胃癌の原因であるという説がありますが、同菌によってヒトの直腸癌や食道癌ができるのであれば、それは正しいでしょうが、今のところスナネズミの胃に癌ができるだけです。

 以上、癌は喫煙粒子の体内分布で説明できることになったわけです。よく考えてみますと、既にわが国では癌の原因を解明した実験があったのです。

動物実験

  山際・市川のコールタール塗布発癌実験(1915年)

  コールタールは古代の植物が地殻変動で地中に埋没して高温高圧下に炭化してできた石炭の高温乾留物質である。

  タバコのタール(植物タール)と同じである。

  ウサギ耳介皮膚の扁平上皮癌を人工的につくった。

  当時の評価=ウィルヒョウの癌刺激発生説裏付け実験

  正当な評価=ヒトの癌の原因を解明した実験

臨床実験

  英国における煙突掃除夫陰嚢癌多発の歴史(燃料=石炭)

  ジュリー・アンドリュース主演の映画「メリー・ポピンズ」には全身ススだらけの煙突掃除夫が出て来る。彼らに陰嚢癌が多発した。

  →スス=石炭の不完全燃焼残留物≒タール

 これらの成績は、第38回(熊本市)および第39回(横浜市)日本呼吸器学会総会の一般演題として報告しています。私の結論は、癌治療というのはタバコのみの尻拭いに過ぎない、ということです。タバコを直接にしろ、間接にしろ、吸わなければ癌にならないのです。

 病気というのは神の創造になるもののはずです。その治療方法は神が人類のために用意してあって、それを神から授かった人類の知恵が見つけだして治療し、病気が治癒しているのだと私は考えています。しかし、癌は神の創造によるものではないはずです。人間がタバコを吸って、人間自らが作り出した病気です。だから、癌には治癒という概念がないのです。癌治療学上、治癒とは言わず完全緩解といっているのはまさにこのことをさしています。

 新聞の第一面最下段の書籍広告欄には、毎日のように「癌が治った」「癌が消えた」という医薬品まがいの「健康食品」を紹介する書籍の広告が載っています。患者が藁をも掴むおもいで、これらの「癌が治る健康食品」に飛びつきますが、藁を掴んでいる、あるいは掴まされていることになることは言うまでもありません。

 癌治療の医療費は、非喫煙者にとっては不当な支出です。タバコ会社が支払うべきと私は考えています。健康のために吸いすぎに注意しましょう、としか書いていません。注意だけで、警告ではありません。

 抗癌剤は癌という病気の治療薬ではありません。癌という悪性腫瘍の縮小効果が認められる薬剤に過ぎません。

 手術によって癌病巣が完全に切除されても、それは治癒ではありません。切除された臓器の機能が欠落します。後遺症が残るということです。後遺症があっては治癒とは言えません。元通りになることが、治癒であるはずです。

 癌予防10箇条なるものを、患者が入院する時に持ってくる湯飲み茶碗に書いてあるのを見かけます。癌に「未だ明らかにされていない原因」があって、よく予防できるものだな、と思いませんか? それはUFOの攻撃から地球を防衛するために、地球防衛軍を準備するようなものと思えてなりません。

 癌の予防は、タバコを吸わない・吸わせない、に尽きます。

 「たばこ税」が地方税で、その収入が地方公共団体の予算に組み入れられるとしても、主として癌の診療しかしない公的医療機関「がんセンター」は、特定の人(直接喫煙者と間接喫煙者)だけが利用するもので不公平です。必ずしも公的である必要がありません。公的であるためには看板の付け替えが必要というのが、私の意見です。「たばこ病センター」とするのも一案です。

 喫煙者が癌になる確率を最後に書いておきましょう。肺癌になる確率は男子喫煙者の約8%、女子喫煙者の約10%程度でしょう。

 肺癌を含めどこかの癌になる確率は男子喫煙者の40%、女子喫煙者の50%と今のところ考えています。

 夫が喫煙者で妻が非喫煙者の場合、妻が癌になる確率は、30〜35%程度はあるのではないかと推測しています。

 以上。